シフその2~オール・ベートーヴェン・プロ
シフのリサイタル。オール・ベートーヴェン・プログラム、サントリーホール(3月16日)。
《6つのバガテル》作品126と《ディアベッリ変 奏曲》という組み合わせは、昨年12月のトッパンホールにおけるシュタイアーのリサイタルと同じだ。今回はさらに32番のソナタを弾いた(ついでに言え ば、この3曲はシフのアルバムの収録曲と同じだ。ECM)。ピアノはベーゼンドルファー。
演奏の集中度を高めるためだろう、いつものように照明はピアノにスポットが当たる程度。「バガテル」は全6曲を通して一貫した流れを感じさせる物語り(Erzaehlung)のような組立て。32番のソナタは、とりわけ第2楽章の第4変奏の弱音のトリル以後が印象的だ。
「ディアベッリ」は主題から諧謔的な性格を強調し、機知(witzig)に富んでドイツ風フモールを感じさせる。幾分乾いた木質の音色の軽やかなタッチ は、19世紀中頃のウィーンのフォルテピアノを想起させるが(少し前のベーゼンドルファーにはその名残がある)、実際、時折フォルテピアノのモデレーター (弱音の変音ペダル)のような音色を出すのが面白い。
明快なアイデア、強弱や緊張と弛緩の鋭いコントラスト、音楽事象のレトリカルな意 味深さなど、フォルテピアノとモダンのピアノの違いはあるにしても、そしてまた、表現そのものは全く異なるものの、シュタイアーのアプローチに共通するも のがある。テクスチャーの明快さも同様だ。それに加えて、カンタービレの箇所の優美なフレージングは、シフの身体に沁み込んだ原ヨーロッパ的な音楽性の現 われだろうか。すべての変奏を終え、最後の音を果てしなく伸ばして、満場の聴衆とともに、消えゆく音楽の余韻を味わう。
当夜は、シフの希望で出演料の全額を東北復興に寄付するという(「東北に捧げるコンサート」のサブタイトルがついていた)。アンコールに「ゴルトベルク」 のアリアを弾き、シフが英語でスピーチ。その後のベートーヴェンのソナタ30番(全楽章!)の、ヒューマンな感動に満ちた響きが忘れられない。
《6つのバガテル》作品126と《ディアベッリ変 奏曲》という組み合わせは、昨年12月のトッパンホールにおけるシュタイアーのリサイタルと同じだ。今回はさらに32番のソナタを弾いた(ついでに言え ば、この3曲はシフのアルバムの収録曲と同じだ。ECM)。ピアノはベーゼンドルファー。
演奏の集中度を高めるためだろう、いつものように照明はピアノにスポットが当たる程度。「バガテル」は全6曲を通して一貫した流れを感じさせる物語り(Erzaehlung)のような組立て。32番のソナタは、とりわけ第2楽章の第4変奏の弱音のトリル以後が印象的だ。
「ディアベッリ」は主題から諧謔的な性格を強調し、機知(witzig)に富んでドイツ風フモールを感じさせる。幾分乾いた木質の音色の軽やかなタッチ は、19世紀中頃のウィーンのフォルテピアノを想起させるが(少し前のベーゼンドルファーにはその名残がある)、実際、時折フォルテピアノのモデレーター (弱音の変音ペダル)のような音色を出すのが面白い。
明快なアイデア、強弱や緊張と弛緩の鋭いコントラスト、音楽事象のレトリカルな意 味深さなど、フォルテピアノとモダンのピアノの違いはあるにしても、そしてまた、表現そのものは全く異なるものの、シュタイアーのアプローチに共通するも のがある。テクスチャーの明快さも同様だ。それに加えて、カンタービレの箇所の優美なフレージングは、シフの身体に沁み込んだ原ヨーロッパ的な音楽性の現 われだろうか。すべての変奏を終え、最後の音を果てしなく伸ばして、満場の聴衆とともに、消えゆく音楽の余韻を味わう。
当夜は、シフの希望で出演料の全額を東北復興に寄付するという(「東北に捧げるコンサート」のサブタイトルがついていた)。アンコールに「ゴルトベルク」 のアリアを弾き、シフが英語でスピーチ。その後のベートーヴェンのソナタ30番(全楽章!)の、ヒューマンな感動に満ちた響きが忘れられない。
by Musentanz
| 2014-03-24 19:49
| コンサート